コーヒーの品種は世界に約200あるといわれますが、元をたどると数えるほどの原種にたどり着きます。その中心にあるのが、アラビカ・カネフォラ(通称ロブスタ)・リベリカという3つです。名前は聞いたことがなくても、あなたの一杯はほぼ確実にこのどれかから来ています。味も、育つ土地も、カフェインの量も違う。その違いを知ると、いま飲んでいる豆の輪郭が少しはっきりします。順番に見ていきます。

コーヒーには大きく3つの原種がある

コーヒーの木にはたくさんの種類がありますが、飲用として広く育てられているのは、大きく3つの原種です。アラビカ種、カネフォラ種(ロブスタ)、そしてリベリカ種。銘柄やブランドの数は膨大でも、根っこはこの3本に収れんしていきます。

「ロブスタ」という呼び名は、正しくはカネフォラ種の中の代表的なグループを指す言葉です。あまりに広く使われたため、いまでは種の通称のように定着しました。本記事でも、なじみのある「ロブスタ」と併記しながら進めます。

そしてもう一つ、リベリカという原種があります。名前を聞く機会は少ないかもしれません。生産量はごくわずかですが、近年あらためて注目され始めています。理由は後半で触れます。まずは、この3つが味と栽培でどう違うのかを見ていきましょう。

3原種の違い(味・栽培・カフェイン・用途)

一番の違いは、風味の華やかさと、育てやすさのバランスにあります。おおまかに言えば、アラビカは香り高いが繊細、ロブスタは力強く丈夫、リベリカはその中間で個性的、という住み分けです。豆の姿にも、それぞれの個性が表れます。

アラビカロブスタリベリカ 細長く、合わせ目がS字丸く、合わせ目が直線的大きく、先が尖る
図:3原種の豆の形(合わせ目の曲がり方と輪郭に個性が出ます)

アラビカ種は、花や果実を思わせる酸味と香りが持ち味です。標高の高い涼しい土地を好み、病害虫に弱く、栽培に手がかかります。スペシャルティコーヒーの多くはこのアラビカ種です。一方のロブスタ種は、低地でも育ち、病気にも強い。味は苦みとコクが中心で、香りの繊細さより「濃さ」で存在感を出します。インスタントや、エスプレッソのブレンドで骨格をつくる役割によく使われます。

カフェインの量にも差があります。一般にロブスタのカフェインはアラビカのおおよそ2倍前後と言われます。ただしこの数値は品種や分析方法で幅があり、単純な断定は避けたほうがよい数字です。カフェインは苦みや、虫に対する防御にも関わるとされ、丈夫なロブスタで多い傾向がある、と理解しておくと十分です。

観点 アラビカ ロブスタ(カネフォラ) リベリカ
風味 華やかな酸味・香り 苦み・コク・重さ 独特の香り・力強さ
栽培環境 高地・涼しい気候 低地・高温に強い 低地・高温多湿に強い
病害虫 弱い 強い 比較的強い
カフェイン 少なめ 多め(約2倍前後) 中程度とされる
主な用途 シングル・スペシャルティ ブレンド・インスタント 一部地域で愛飲

数字だけを見ると優劣がありそうですが、実際は役割の違いです。繊細な一杯を求めるならアラビカ、濃厚な骨格が欲しいときはロブスタ、というふうに、目的で選ばれています。

生産比率と近年の動き

いま世界で生産されるコーヒーの多くはアラビカ種です。国際コーヒー機関(ICO)や米国農務省(USDA)の統計をもとにすると、おおよそアラビカが6〜7割、ロブスタが3割前後、リベリカは1%に満たない、という構図が続いてきました。

アラビカ 約6〜7割 ロブスタ 約3割 リベリカ 1%未満 ※ ICO/USDA統計をもとにした目安。年次で変動し、近年はロブスタ比率が上昇傾向。
図:世界のコーヒー生産のおおよその内訳

ただし、この比率は固定されたものではありません。近年はロブスタの割合が上昇する傾向が指摘されています。背景には、ロブスタが高温や病害に強く、気候変動のなかで育てやすいこと、そして需要面の変化があるとされています。年によって数字は動くため、「アラビカが多数派だが、その差は少しずつ縮まってきている」という理解が実態に近いでしょう。

比率の話でよく見かける数値には、出典のはっきりしないものが混じります。ここで挙げた幅も、公的統計をもとにした目安であり、年次で変わる点はおさえておいてください。大切なのは、正確な小数点よりも「どちらが増えているか」という流れのほうです。

アラビカの中の品種(ティピカ・ブルボン・ゲイシャ)

私たちが銘柄として目にする名前の多くは、原種そのものではなく、アラビカ種の中の「品種」にあたります。ティピカ、ブルボン、ゲイシャ(ゲシャ)といった名前が、その代表です。

原種と品種の関係は、木でいえば幹と枝のようなものです。アラビカという幹から、栽培や突然変異を通じてさまざまな枝が分かれてきました。ティピカとブルボンは古くからある基本的な系統で、多くの現代品種のもとになっています。ゲイシャは、花のような香りと明るい酸で知られ、品評会で高い評価を集めてきました。

コーヒーノキ属 アラビカ種 香り高いが繊細 カネフォラ種 ロブスタ/力強い リベリカ種 希少・個性的 ティピカ ブルボン ゲイシャ =アラビカ種の中の「品種」 銘柄名の多くは、この品種や産地に由来します
図:3つの原種(幹)と、アラビカ種から分かれた主な品種(枝)

こうした品種の違いは、同じアラビカの中でも香りや酸の質を大きく左右します。産地名や精製方法とあわせて品種名が書かれていれば、その豆がどんな表情を持つのかを推し量る手がかりになります。スペシャルティコーヒーの世界では、この階層をたどる楽しみも味の一部です。

リベリカ/エクセルサ — 希少な第3・第4の顔

リベリカは生産量こそ1%前後と少ないものの、高温や病害への強さから、気候変動のもとで再評価が始まっている原種です。近縁のエクセルサとあわせて、「今後増えるかもしれない品種」として研究の対象になっています。

英国王立植物園キュー(Kew)などの研究機関は、リベリカやエクセルサが、温暖な低地でも育ちやすい点に注目しています。アラビカが涼しい高地を必要とするのに対し、暑さに耐える原種は、気温上昇が進む産地にとって選択肢になり得ます。査読論文でも、リベリカの栽培気候が持つ可能性が議論されています。まだ主役ではありませんが、静かに存在感を増しつつある顔です。

味については、独特の香りと力強さがあると言われますが、流通が限られるため、飲んだことのある人は多くありません。私たちのような小さな焙煎所でも、実物に触れる機会はそう多くない、貴重な領域です。もし手に入れば、いつか一杯として紹介したい原種でもあります。

あなたの一杯はどの原種?

いま手元にある豆がどの原種かは、いくつかの手がかりから推し量れます。決め手は、酸の華やかさ・コクの重さ・価格帯の3点です。

厳密な判別は成分分析が必要ですが、日常ではおおよその見当がつけば十分です。次のような傾向を目安にしてみてください。

  • 華やかな酸味や果実の香りが立つ … アラビカ種の可能性が高い
  • 苦みとコクが強く、価格が手ごろ … ロブスタ、またはロブスタを含むブレンドかもしれない
  • 袋に品種名(ティピカ・ゲイシャ等)や単一農園の表記がある … アラビカ系のスペシャルティであることが多い

もちろん、ブレンドでは複数の原種や品種が混ざります。パッケージの表示や、お店の説明を合わせて見ると、より確かです。判別そのものが目的ではなく、次に試す一杯を選ぶ入口だと考えると気楽です。

mumuの豆で言うと

mumuが扱っているのは、アラビカ種のスペシャルティコーヒーです。私たちは、産地や生産者がたどれる豆を選び、その個性が素直に出る焙煎を心がけています。

たとえば、いま扱っている2種で言うと。

エチオピア シダモ(浅煎り) は、シダモ県ベンサの「ボナズリア・ウォッシングステーション」から届く、原生品種(Heirloom)をウォッシュドで仕上げた豆です。グレープフルーツやアプリコット、グァバ、ベルガモットのような、華やかで少し複雑な香り。心地よいフルーティな酸味と優しい甘みが共存するように、浅めに焙煎しています。

インドネシア マンデリン(深煎り) は、スマトラのポルン地区で小規模生産者(250 Smallholders)が育てた、アテン・ティムティムをスマトラ式で精製した豆です。ハーブのような風味とほろ苦さ、そして濡れた森の木や土を思わせる、マンデリン特有の「アーシー」な香り。深めに煎っていて、ミルクを合わせてもその輪郭は残ります。

同じアラビカ種でも、産地や精製、そして焙煎の深さで表情はまったく変わります。浅く煎れば酸と香りが前に出て、深く煎ればコクと甘い余韻が主役になる。原種の話は入口で、そこから先は一杯ごとの個性の世界です。

朝・夕・夜で選ぶ

原種や品種を知ったら、あとは時間帯に合わせて選ぶのも一つの楽しみ方です。同じ豆でも、朝に飲むか、夜に飲むかで、ちょうどいい表情は変わります。

朝には、酸の明るいアラビカの浅煎りが目を覚ましてくれます。夜には、コクと甘みのある深煎りが、一日の終わりに静かに寄り添います。mumuは、その時間帯に合う一杯を考えながら焙煎しています。気になる原種があれば、珈琲豆の一覧からゆっくり選んでみてください。今夜の一杯から、次の一杯を探すくらいの気持ちで大丈夫です。

よくある質問

アラビカ種とロブスタ種の違いは? 最大の違いは、風味と栽培のしやすさです。アラビカは華やかな酸と香りを持つ一方で高地を必要とし病害に弱く、ロブスタは苦みとコクが中心で低地や高温にも強く育ちます。カフェインはロブスタのほうが多い傾向です。

リベリカ種ってどんな味?なぜ希少なの? 独特の香りと力強さがあると言われますが、生産量が世界の1%前後と少なく、飲む機会は多くありません。栽培や流通の規模が小さいことが希少さの理由で、近年は気候変動への強さから再評価も始まっています。

ロブスタは「まずい」って本当? 一概には言えません。苦みやコクが強く繊細さでは劣るとされますが、それは役割の違いによるものです。良質なロブスタはエスプレッソに厚みを与え、ブレンドの骨格として生かされています。

カフェインが多いのはどの種類? 一般にロブスタ種が最も多く、アラビカのおおよそ2倍前後とされます。ただし品種や分析方法で数値には幅があり、単一の値で断定はできません。目安として、丈夫なロブスタで多い傾向、と捉えてください。

普段飲んでいる豆はどれに当たる? 多くの場合はアラビカ種か、ロブスタを含むブレンドです。華やかな酸や果実の香りが立つならアラビカ、苦みとコクが強く手ごろならロブスタ寄り、というのが大まかな見分け方になります。